中小企業のための就業規則作成ガイド
~ 労務トラブルを防ぎ、人材定着につなげるために~
会社を経営していると、必ず直面するのが「人」に関する課題です。採用や教育、給与の設定、休暇制度など、従業員の働き方をめぐるルールは、会社の安定経営に直結します。その中心となるのが「就業規則」です。就業規則は、単なる社内ルールではなく、労働基準法に基づいた法的効力を持つ重要な文書であり、トラブルを未然に防ぎ、従業員が安心して働ける環境を整える役割を果たします。
特に中小企業の場合、「うちは少人数だから口頭で十分」「従業員がみんな理解しているからルールはいらない」という声を耳にします。しかし実際には、解雇や労働時間、残業代の未払い、退職トラブルなど、思わぬ場面で法的リスクが顕在化するケースが少なくありません。その防波堤となるのが、適切に作成された就業規則なのです。
ここでは、就業規則に必ず記載しなければならない事項と、必要に応じて定める事項、そして中小企業で実際に起きた事例を交えてご紹介します。
就業規則に記載すべき事項の種類
労働基準法第89条により、就業規則には以下の3種類の事項があります。
・ 絶対的必要記載事項
どの会社でも必ず記載しなければならないルールです。
労働時間に関する事項(始業・終業の時刻、休憩、休日、休暇、交替制勤務のルールなど)
賃金に関する事項(賃金の決定方法、計算方法、支払方法、締切日と支払日、昇給ルールなど)
退職に関する事項(退職手続き、解雇事由など)
・ 相対的必要記載事項
会社でルールを設ける場合に記載が必要となるものです。例えば、退職金制度、賞与、休職制度、安全衛生、表彰・制裁などがこれにあたります。
・ 任意的記載事項
法律上の義務はありませんが、会社独自のルールとして記載することで明確化できるものです。たとえば在宅勤務制度、資格取得支援制度、副業ルールなどが挙げられます。
事例①:解雇トラブルを防いだケース
ある製造業の中小企業では、就業規則に「懲戒解雇」の事由を明確に定めていませんでした。そのため、度重なる無断欠勤を繰り返した従業員を解雇したところ、不当解雇だとして労働基準監督署に申告され、トラブルに発展しました。
このケースでは、解雇のルールを事前に明記していなかったことが問題でした。後日、当事務所のサポートで「無断欠勤が一定日数に及んだ場合は懲戒解雇とする」と明文化し、労使双方が納得できる形で再発防止につなげました。
事例②:残業代請求を回避できたケース
別のサービス業の会社では、就業規則に始業・終業の時刻や休憩時間があいまいに書かれており、従業員が「サービス残業をさせられている」と主張しました。会社側は「本人の自主的な残業だった」と説明しましたが、ルールが曖昧だったため不利な立場に置かれました。
このケースを踏まえ、始業・終業の時刻を明確に定め、時間外労働は必ず上司の承認を得るルールを就業規則に追加しました。その結果、従業員側の不満も解消され、残業管理もスムーズになりました。
就業規則がもたらすメリット
就業規則を整備することは、単に法律を守るためだけではありません。以下のようなメリットがあります。
・ トラブル防止:曖昧な取り決めをなくし、解雇・残業・休暇などの紛争リスクを低減します。
・ 従業員の安心感:ルールが明文化されることで、従業員が安心して働けます。
・ 採用力の強化:明確なルールや福利厚生が整っている会社は、求職者にとって魅力的に映ります。
・ 経営の効率化:判断に迷う場面でもルールに基づいて処理でき、経営判断がスムーズになります。
専門家によるサポートの重要性
就業規則は、ひな形を流用すれば簡単に作れると思われがちですが、実際には各会社の実情に合わせてカスタマイズすることが不可欠です。インターネット上の雛形をそのまま使った結果、実態と合わずに逆にトラブルを招く例もあります。
たとえば、店舗スタッフの多い小売業と、専門職が中心のIT企業では、必要なルールが大きく異なります。残業時間の管理方法、副業の扱い、評価制度や昇給ルールなど、事業の特性に合わせた規定がなければ意味をなしません。
社会保険労務士は、労働基準法をはじめとした労働関連法規に精通し、実務の視点から就業規則の作成・改定をサポートします。当事務所では、中小企業の実態を丁寧にヒアリングし、御社の経営方針や従業員の働き方に即した最適な規則をご提案いたします。
まとめ
就業規則は、中小企業にとって「会社を守り、従業員を守る」重要なツールです。法的に必要な事項を満たすことはもちろん、自社の実情に合わせたルールを定めることで、トラブルを未然に防ぎ、人材定着や採用力強化につながります。
「就業規則をまだ整備していない」
「昔作ったまま見直していない」
という場合は、ぜひこの機会にご相談ください。当事務所では、初回相談を無料で承っております。御社の発展をサポートする就業規則づくりを、ぜひ一緒に進めてまいりましょう。

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