【中小企業向け】「人が採れない」を解決する7つのステップ|定着する人材募集・採用の基本
経営者の皆様、特に先代から事業を引き継がれ、これからの会社を担う40代・50代の事業主様とお話ししていると、「求人を出しても人が来ない」「採用してもすぐに辞めてしまう」というお悩みを本当によく耳にします。
「今は人手不足の時代だから仕方ない」と内心諦めている方も多いようです。
しかし実際には、同じ業界・同じような規模でも、適切な人材を継続的に採用できている会社は存在します。
その違いは、給与などの「求人の条件」だけではありません。多くの場合、「求人の進め方」そのものにボトルネックが隠れているのです。
本記事では、事業をさらに成長させたいとお考えの経営者様・人事担当者様へ向けて、採用活動を成功に導くための「7つのステップ」を、具体的な事例を交えて詳しく解説します。
ステップ1:自社(事業部門)の「業務の棚卸し」
「とにかく人手が足りない!誰でもいいから早く来てほしい!」
慢性的な人手不足に悩む現場からは、そんな声が上がりやすくなります。しかし、会社内のすべての業務で均等に人が足りないということは稀です。
まずは、営業、製造、バックオフィスなど、各部門の業務を以下の視点で細分化(棚卸し)します。
業務の種類と専門性(誰にでもできるか、有資格者・熟練者が必要か)
業務にかかる時間(従業員の延べ労働時間と一致するか確認)
業務の重要度・優先順位(100%〜10%で乗率を決める)
その業務が止まった場合の損失額
【具体例】
「営業担当者が足りない」という場合でも、業務を棚卸ししてみると「顧客訪問(50%)」「見積書作成・データ入力(30%)」「社内会議・日報(20%)」という構成だったとします。
この場合、必ずしも「高給で優秀な営業マン」をフルタイムで雇う必要はありません。「見積書作成・データ入力」の業務だけを切り出し、パートタイムや時短勤務の事務スタッフを採用することで、既存の営業担当者が本来の「顧客訪問」に専念でき、結果的に営業部門全体の人手不足が解消されるケースが多くあります。
ステップ2:不足している人材の要件・要員数の確認
業務の棚卸しができたら、次は「どんな人が、何人(何時間分)足りないのか」を可視化します。
単なる「頭数」ではなく、ステップ1で決めた優先順位(乗率)をもとに、加重平均して不足人員を考えます。
【よくある見落とし】
人件費率は業種ごとに適正な枠があります。もし、必要な人数を雇うと人件費率を圧迫してしまう場合は、そもそも「業務ごとの生産性」や「社内の連絡体制」にムダがあるサインです。
特定の従業員に業務が偏っていないかを確認し、社内体制を整えるだけで、新たに人を雇わずとも「人手不足感」が劇的に解消する事業所様も少なくありません。
ステップ3:事業計画に直結する「採用計画の作成」
採用活動は、今後の事業計画と連動していなければなりません。
3年後・10年後の組織図を想像する
定年退職、介護離職、結婚・出産による離職など、将来発生しうる欠員を確率的に推計します。さらに、新規出店や事業拡大に必要な人員を加算します。
「どんな人」を採用するのか?
若年層(新卒・第二新卒)か、即戦力の中高年層か。
ここで中小企業において最も重視すべきは、純粋な技術力よりも「コミュニケーション能力」です。
中小企業では一人で多様な業務を兼務することが多く、他部署との調整が頻繁に発生するため、社内で円滑に連携できる力が必須となります。
【新卒と中途採用の考え方】
近年、若年層の就職観は大きく変化しており、「一つの会社で定年まで働く」ことを前提としない求職者が増えています。そのため、「若いから長く働いてくれる(得)」「中高年だから(損)」というステレオタイプな考え方は危険です。
年齢にとらわれず、「現在の自社の課題を解決してくれる能力を持っているか」をフラットに精査することが重要です。
ステップ4:求職者に「選ばれる」ための求人募集
採用成功の鍵は、自社にマッチする「母集団(応募者の束)」をいかに大きく形成できるかにかかっています。母集団が大きければ、自社に合う人材に出会う確率が高まり、定着率も向上します。
求人メディアの選び方と費用対効果
管理職や高度専門職が急ぎで欲しい場合: 費用をかけても、専門性の高い人材紹介会社(エージェント)を利用するのが確実です。
急ぎではないが将来的に専門人材が欲しい場合: 成功報酬型の人材紹介や、各都道府県の「プロ人材拠点(産業センター等)」の活用がおすすめです。公的な機関は費用がかからず、思いがけず優秀な人材と出会えることがあります。
一般的な職種の場合: 自社の採用ホームページの充実、SNS発信、ハローワーク、Indeedなどの求人検索エンジンの活用という「基本」の組み合わせで十分な成果が上がります。
自社採用ホームページとSNSの連動(必須)
真剣に就職を考えている求職者(や若年層の保護者)は、必ず自社のホームページを隅々までチェックします。
SNS(InstagramやXなど)では、高度な動画編集は不要です。「紙芝居」のような数枚の静止画でも構いません。
会社の雰囲気が伝わる
職場が清潔である
社員の表情が良く、明るい雰囲気で作業している
どんな製品・サービスを扱っているか分かる
これらの要素を発信し、興味を持たせてから「詳細な労働条件や理念が載っている自社採用ホームページ」へ誘導する導線を作りましょう。
【ターゲット別:心に響く求人票のキャッチコピー例】
若年層向け(成長や居心地の良さをアピール)
「フレンドリーなチームで、楽しく働きませんか?」
「職業訓練でスキルアップ!未経験からプロを目指せる職場」
中途採用・転職者向け(正当な評価とやりがいをアピール)
「あなたの経験が必要です。正当な評価と裁量で、もう一度挑戦しませんか?」
「仕事の成果はしっかり還元。柔軟でクリエイティブな働き方!」
※求職者の大半はスマートフォンで求人を見ています。エントリーシートのスマホ対応(WEBフォーム化)は絶対条件です。
ステップ5:見極めと動機付けの「採用選考」
応募が来たからといって、焦って妥協の採用をしてはいけません。「自社で教育できる範囲か」を冷静に見極めます。
面接は原則「2回」実施する
中小企業であっても、可能な限り面接は2回行いましょう。
1回目: 会社概要や求人内容の詳細説明、適性検査(SPIなど)。
2回目: 現場の従業員も交えた面接と詳細な質疑応答。
面接を2回にするだけで、「とりあえず受けてみよう」という層や、ミスマッチによる早期離職リスクを大幅に減らすことができます。複数の面接官(既存社員など)の意見を聞くことも大切です。
未経験者への「リアルな」説明
「未経験歓迎」で募集した場合、入社後の教育・研修計画(期間、内容、誰が教えるのか)を具体的に説明してください。ここが曖昧だと、「思っていたより仕事がきつい」「放置された」と感じられ、入社直後の退職に直結します。
ステップ6:トラブルを防ぐ「採用決定と入社手続き」
採用が決まった後も、気を抜くことはできません。労使トラブルを防ぐための重要なフェーズです。
労働条件の再確認: 求人票の内容と、実際の労働条件通知書(雇用契約書)の内容に齟齬がないか必ず確認してください。
入社までの段取り: 必要な書類、健康診断、入社日当日のスケジュールなどを書面で案内します。
内定取消・試用期間の明記: 万が一のトラブルに備え、就業規則に基づいた取り決めを事前に通知します。
最も重要な「入社後14日間」の過ごし方
労働基準法第21条において、「試の使用期間中の者」に対する解雇予告の特例は入社後14日以内とされています。
この期間を単なる「お客様扱い」で過ごさせるのではなく、フルタイム勤務であれば最初の1週間で業務への姿勢をしっかり観察・指導してください。週末に改善点を伝え、2週目にどの程度改善されたかを確認する。このプロセスを経ることで、会社としても本人としても、納得のいく適正な評価が可能になります。
最後に:会社を強くする採用活動に向けて
今後、労働人口の減少に伴い、人材獲得競争はますます激化していきます。
しかし、「良い会社を作り、それを適切に求職者へアピールできている会社」は、規模の大小に関わらず必ず良い人材を集めることができます。
採用活動は、ただの「人集め」ではなく、「会社の未来を創る投資」です。
業務の棚卸しから定着まで、自社だけでは対応が難しいと感じられた場合は、人事・労務の専門家である社会保険労務士にご相談ください。
「自社に合った採用計画の立て方がわからない」
「今の就業規則や賃金規程が採用のネックになっていないか見てほしい」
「採用や従業員のキャリアアップに使える助成金(※)を知りたい」
事業承継後の新しい組織づくりや、採用定着に向けた仕組みづくりなど、経営者様が本業に専念できるよう、当事務所がしっかりとサポートいたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。
(※) 働き方改革推進支援助成金や人材開発支援助成金など、採用・定着・ホームページ作成に活用できる助成金・補助金があります。年度ごとに要件が変更されるため、最新の情報に基づいたご提案をいたします。